Wednesday, December 26, 2007

人生のプロジェクト

★★★★★

すごい本です。
感動しました。
プロジェクトの進め方の本でもあり、人々への応援歌でもある。

この本ができたとき、著者たちはさぞうれしかっただろうなあと思えます。写真。少しの文字。断定。短い疑問文。そういった要素をだんだん積み上げて、大きな効果をあげていると思います。

写真にはインドかどこかのアジアっぽい外国の写真が多く使われていて、その土地の子供たちや大人たちの生き生きとした姿が切り取られています。個人的には著者が日本人なのにこの写真に日本人の姿が見当たらないことが少し不思議でした。貧しくても元気よく生きている様子を撮りたかったのに、現在の日本にはそんな人がいないか、いてもこの本の印象をよくすると思わなかったのでしょうか。

それでも、この本の発表会というのが仮にあったとして、私がたまたまそこに立ち会っていたとしたら、私は立ち上がって拍手をするでしょう。思い切り強く音をたてて、手のひらが痛くなってもなおたたいていることでしょう。私はこの本に賛辞をおしみません。

Tuesday, December 25, 2007

ヒット商品を創るデザインの力

★★★☆
顔が映るほどのつややかな黒い紙が使われていて、装丁が美しい本です。さすがはデザイナーの著書。そう思わせる仕上がりです。

液晶テレビAQUOSの製品デザインの成功談で始まり、デザイナーとしての来歴を振り返り、グッドデザイン賞の総合審査委員長を務めた経験も踏まえつつ、国家を挙げてのデザインの時代がきていると宣言する。本書の内容は、鼻につくことはないものの、ある意味で自慢話を聞いているような感じもします。語り口はさらっとしているので読みにくくはありません。

写真がたくさん掲載されていて、話もよくわかります。体験談としては興味深いところが多いです。欲をいえば、体験談の枠を超えて、ほかのデザイナーの例をもっと挙げてあるとよかったかな。

どんな製品がわたしたち利用者の美的感性をくすぐり、ほしいという気持ちに火をつけるのか。その企画・開発・販売・サービスには何が意識され、どんな取り組み方がされるのか。そういった作業がかいま見える本として、見て楽しく、読んでおもしろい本でした。

デザイン思考の道具箱

★★★★
企業が製品を事業としてデザインする場合にも、心地よさや喜びが感じられる製品にするためにはどうするか。こんなふうに取り組むとよいのではないか。そんな提言が方法論として語られています。

著者は大学教授であり、かつ会社経営もされているそうですが、著者自身がこの本を書くことをとても楽しんでいるような印象を受けました。おもしろい本です。早川書房はSFやノンフィクションばかりではなくビジネス関連でもおもしろい本をよく出していますね。

黒い地の文の文字と、蛍光色のオレンジがかった赤の見出しの二色刷りで、ちょっと蛍光色の部分が見づらいと感じました。そこだけが残念。

プリンに醤油でウニになる

★★★☆
とってもいろものなタイトルですね。
いつだったか、テレビで森永卓郎教授が食べてみていたシーンを覚えています。
この本によればプリンと醤油だと安物のウニの味になるそうですが、ともかくプリンの味に含まれる卵の味と甘みと柔らかい口当たり自体、においを除けばわりとウニに似ているような気もします。

さて、この本は味覚センサーの本です。ついでににおいセンサーについても触れられています。味やにおいを物理的・化学的に識別する仕組みと装置を発明した顛末とその応用についての展望を語っている本です。味覚センサーを使って客観的に数量化した結果は人間の味の感覚とよく適合していて、逆にいえば味わったことのない味でも、味覚センサーで測定した結果をもとに味を云々することの妥当性を主張できるということになります。測定結果によれば、プリンと醤油の(配合の割合にもよるでしょうが)合わせた味はたしかにウニの味に近いということがわかるそうです。さらに、味覚センサで数量化した配合を人工的に再現することも可能になるので、将来は味覚センサーと味覚ディスプレイを組み合わせて時間や空間を超えて味の再現/通信ができるだろうということで、興味をかきたてられます。

付録にはいろいろな食品のテイストマップ(味の地図)がついています。日本酒・焼酎・ワインの味覚マップは飲み会に持っていくとメニューではわからない味で選べて便利そうです。

プログラミングMac OS X for Unix Geeks

★★★
5年ほど使っていた東芝製のDynabookのハードディスクが故障してしまったので、パソコンを買い替えました。トム・デマルコの著書「デマルコおおいに語る」でMacintoshに興味をもっていたので、Apple社のMacBookにしてみました。それで、MacのOSの本を読んでみることにしたのです。

技術書なので、いわばマニュアルを読むようなものですから、途中途中で退屈になることもあってほかの本に浮気したりしましたが、そんなにページも多くないので、ぜんぶ読むのに実際にかかった時間はそんなに多くありません。

WindowsともUnixとも違うMac OS X(UNIXを名乗る資格はあるそうですが)の入門に、読んでおくとよい本だと思います。
アプリケーションがディレクトリのクリックで起動できるようになっているという仕組みなんかは、とても新鮮でした。


一瞬でやる気が出る脳のつくり方

★★★
やる気がでないのはなぜか?
どうすればやる気を出せるか?

そもそも脳というものは、先の見えない努力は嫌がる。できそうもないと考えることもしたがらない。疲れていたら眠りを求める。脳というのはこういう性格なのだ。だから、脳がいやがらないように仕向ければやる気を出すことはできる。脳がいやがらないような仕方でやる気を出すようにするほうがいい。そういう書き方がされています。ほんとにやる気が枯れつきてしまったのだとしたらそれはもう病気だから治療が必要で、その現れ方は、やる気とエネルギーのそれぞれの多寡によって決まる。それは躁・鬱・不安障害・慢性疲労症候群の4通りの現れ方となるそうです。

説明の仕方が学術的ではないので、ビジネス書のコーナーに並んでいるのは正解ですね。実践的・実用的には十分でしょう。

著者は心理学者だということで当然そうしたバックグラウンドはあるのでしょうが、それを表にはあまり出さずに、たとえ話で説明を進めます。それはとてもわかりやすくて納得もいく説明ではあるのですが、そればかりだと物足りない感じもしました。出典を示したりテクニカルタームを示したりされないと、どうもたよりなく感じたのも事実です。

もう少し学問ぽい語り口のものも読んでみたいと思いました。

意外と知られていないSNSの謎を解く

★★★
会社で社内SNSというのが始まってしばらく経ちます。
もうひとつ、SNS(Social Networking Service)ってなにさ、というのがもやもやしていたので読んでみることにしました。

本書は見開き単位で書かれていて、右ページはイラストによる説明になっています。
見開きごとにトピックが設けられていてそれぞれ簡潔にわかりやすく説明されています。
SNS読本としてはよくまとまっていると思います。

SNSは、タモリの「笑っていいとも」のテレフォンショッキングでのフレーズ「友達の友達はみな友達だ」を技術的に実現するもの、という感じでしょうか。

「遠くの親類より近くの他人」っていうことわざがありますが、SNSみたいな社会的基盤が整ってくると「近くの他人より遠くの知人」っていう風潮が加速するかもしれませんね。隣の人の顔と名前は知らないけど、地球の反対側の友人が昨日ケガしたのは心配っていう具合に。

ネーミングの掟と極意

★★★

ソフトウェア開発における命名についての本です。
おもに、日本語で命名する機能名などの選び方、名付け方が話題にされています。
プログラミング上たいせつな英数字による関数名や変数名の付け方についてもいくらか話題にされていますが、どちらかというともっと根源的な命名についての考え方を学ぼうという本です。

書名からはルール集とか法則集のようなものを思い浮かべたのですが、そうではなく稽古場という感じを受けました。

期待とは違う雰囲気の本でしたが、それなりにいい本だと思います。
説明のしかたはかなり上手です。

Labels:

あなたはコンピュータを理解していますか?

★★★★

情報科学で基本となる概念を卑近な例で解説してくれます。

インスタント味噌汁でエントロピーを語り、石油パイプラインで(情報)チャネルを、ジュースの自動販売機で有限オートマトン、お坊っちゃまの足下に絨毯を継ぎ足してまわる爺や(一種の水道管ゲーム)で参照の局所性について語るという曲芸的な、それでいてなんとも腑に落ちる説明が披露されます。

巻末には解説付きの参考図書リストがあるだけでなく、本の選び方についてのエッセイまで付いています。

まだ読んだことがなかったら、いちど読んでみるといいですよと、おすすめできる本です。

Labels:

ワインバーグの文章読本

★★★★

著者は「ソフトウェア文化を創る」シリーズとか「プログラミング心理学」とかで有名な人です。この本を読む前に読んでいた本が斎藤美奈子の『文章読本さん江』だったので書店で見かけたときには苦笑しました。この人もついに文章読本を書くようになったのかって。

もっとも、ワインバーグさんはユーモアたっぷりなことはあっても美文を書く人ではなく、理解を促し説得する文章を書く人なので、その文章読本といえども文章の書き方というよりは本の書き方についての本になっています。

副題のとおり、一貫して自然にある石を組んで壁を作ることを比喩にして、日常の発見や自分の経験・人の経験から文と文章を作る方法、それらを本にまとめあげる方法について説明してあります。

売り込みについても書こうと考えたがやめることにした、ということですが、もし書かれていたら本を書くつもりのない読者にとっては退屈な章になりそうです。やめて正解だったのではないでしょうか。

全体に、とても好感度の高い本です。文章に表れている著者の人柄が好ましいからでしょうか。

Labels: